股関節痛
症状
股関節は、太ももの骨である大腿骨と、骨盤の骨である寛骨(かんこつ)から出来ている関節で、大腿骨の骨頭部分が寛骨の臼蓋(きゅうがい)部分にはまり込むようにして関節を形成しています。
種類としては、肩と同じ種類の関節で、その構造上、脚を色々な方向へ動かすことができます。その反面、負荷がかかりやすく、運動や日常生活、年齢的な問題等によって障害や痛みを起こしやすい部位の1つです。股関節は体重を支える荷重関節であるため、体重をかけた時や、歩行時の痛みが出ることが、一般的には多くみられます。
それ以外にも鼠径部にはリンパ節が存在するため、炎症が生じると、安静時でも痛みが出る場合もあります。関節の痛みや炎症だけでなく、鼠径ヘルニアや、グロインペイン、内臓や腰からの関連痛などさまざまな要因が股関節痛には関係しています。
原因
何が障害されるかによって、股関節痛の種類も原因も変わってきます。
股関節痛の原因は多岐にわたるため、一般的に起こりやすい股関節痛について、いくつか疾患を記載していきます。
主な症状と原因
変形性股関節症
先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などが基盤となり、変形性股関節症が起こることが多いです。しかし中には、加齢などによって軟骨がすり減り、症状が現れる場合もあります。
症状としては、歩行時や荷重時の股関節の痛みや、股関節の可動域制限などが生じます。特に歩き出しや動き出しに痛みが強い場合があります。痛みや症状がひどい場合には、人工関節などの手術の適応になります。
大腿骨頭壊死症
太ももの骨である大腿骨の骨頭部分での血流が悪くなり、骨の細胞が壊死してしまう疾患の事を、大腿骨頭壊死症といいます。他の病気の治療で、ステロイドを大量に服用されている方や、アルコールの飲酒量が多い方の発生率が高くなりますが、発症の原因が不明なものもあります。
また交通事故や、高齢者の骨折で多発する大腿骨頸部骨折などに続発して起こる場合もあります。壊死が進行すると、股関節の変形が強くなり痛みが強くなる傾向にあります。
ペルテス病
股関節を構成する大腿骨頭の骨端核(こったんかく)という成長軟骨部分が障害されて、骨の壊死が起こり、骨の強度が極端に弱くなり、放置しておくと骨がつぶれて変形が生じてしまう疾患です。大腿骨頭骨端核の血流障害が原因だといわれており、3歳位~14歳位までの年齢に好発します。一般的に男児に多くみられ、女児の約5倍といわれています。
症状としては、初期では太ももや膝の痛みとして訴える場合が少なくありません。しかしこの疾患を放置してしまうと、将来的に股関節の変形や痛みを残すことあり、見落としてはいけない疾患の1つです。症状が進んでくると、歩行時の股関節の痛みが生じ、股関節をかばって、おかしな歩き方(跛行:はこう)が起きてきます。また股関節の動きの制限も現れ、特に股関節を捻るような動きが障害されやすいです。
症状の程度によっては、体重を免荷する必要があり、また治癒まで数年を要してしまう場合もあります。
グロインペイン症候群
「鼠径部痛症候群」とも呼ばれ、鼠径部周辺に痛みが生じるスポーツ障害の1つです。キック動作を繰り返し行うサッカー選手に多く発症します。
痛みはランニング時、ジャンプ時、ステップや切り替えし動作時、キック動作時など様々な場面で見られます。恥骨結合炎や内転筋腱障害、スポーツヘルニア、腸腰筋の機能障害、鼠径管後壁欠損、外腹斜筋腱膜損傷などが原因として考えられています。また筋肉のアンバランスや、負荷が生じやすい様なキック動作、身体の歪み、股関節周囲の可動域の低下、悪い歩行の癖などが要因として挙げられます。
十分な休養を取ったうえで、股関節を中心とした柔軟性の獲得や、体幹や股関節周辺の筋力トレーニング、バランスの改善などが重要になります。
鼠径(そけい)ヘルニア
鼠径部とは大腿もしくは、脚の付け根の部分を言います。ヘルニアとは身体の組織が正しい位置からはみ出た状態を言います。
ヘルニアと言えば、腰部で椎間板が突出してくる、腰椎椎間板ヘルニアが有名ですが、鼠径部でもヘルニアは生じ、一般的には脱腸ともいわれます。本来お腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の直下に出てくる、下腹部の疾患です。鼠径ヘルニアは子供の病気と思われがちですが、むしろ成人に多い疾患です。初期症状としては、立った時やお腹に力を入れた時に、鼠径部の皮膚の下に筋膜や腸の一部が出てきて、柔らかい腫れが出てきますが、普通は指で押さえると引っ込みます。次第に小腸などの臓器が出てくるので、不快感や痛みを伴ってきます。
根本的に治すためには、手術が必要になります。腫れが急に硬くなったり、腫れた部分を押しても引っ込まなくなったり、腹痛や吐き気を伴う場合などは、緊急に手術を必要とする場合もあり注意が必要です。
内臓や腰からの関連痛としての股関節痛
生理痛や消化器からの関連痛として、股関節に痛みが生じる場合があります。また腰椎椎間板ヘルニアなどでは、障害される神経によっては、坐骨神経痛ではなく、大腿前面に神経痛が生じる場合があります。
血行不良や神経痛などにより、原発疾患とは少し離れた場所に、痛みが生じることがあります。
きちんと検査を行い、どの部分が障害されているのかを判断した上で、原発疾患に対しても、治療を行っていく必要があります。
大腿骨頸部骨折
高齢者に多い骨折の1つで、つまずいたり転倒したりした際に起こりやすいです。他には脊椎の圧迫骨折や、上腕骨の骨折などが、起こりやすいです。 大腿骨頸部での骨折部位が、関節包の内側なら内側骨折、関節包の外側なら外側骨折といわれます。一般的に外側骨折の方が骨癒合は良いといわれています。
骨粗鬆症が基盤にある場合が多いです。骨癒合の為に、長期臥床が必要な場合もあり、寝たきりの原因にもなってしまう怖い疾患です。
股関節炎(感染)
股関節周辺に炎症が生じた病態です。いくつかの原因がありますが、股関節にはリンパ節があるため、細菌感染等によっても炎症が生じます。
股関節周辺からの傷口だけでなく、足先や膝の傷口からでも、関節に炎症が生じる場合もあるため注意が必要です。
治療
整骨院は、筋肉や骨、関節のスペシャリストです。スポーツ障害の1つであるグロインペイン症候群や、変形性股関節症については、当院でも治療が可能です。
また股関節周囲の柔軟性の欠如からくる痛み、股関節周囲の筋肉による痛み、歪みやアンバランスによって生じている痛み、歩行の乱れによって生じている痛みなどに関しては、施術の範囲に含まれます。
原因や症状によって、治療は異なります。感染性の股関節炎やペルテス病など、内科や病院に行くべき疾患に起因する股関節痛が疑われる場合には、検査や評価を行い、しかるべき医療機関をご紹介致します。症状が現れてすぐの急性期においては、強い痛みや炎症が併発する場合があります。その場合は、まず患部の安静、アイシングを行います。物理療法や鍼治療、軽度の手技治療も有効です。自宅での痛みの出にくい過ごし方や日常生活を含めたアドバイスや指導を行います。
症状が緩解してきてからは、手技治療やストレッチなどを使い、股関節の柔軟性の改善や筋緊張の緩解を目指します。
股関節は荷重関節であり、骨盤の構成にも関わるような重要な関節です。よって身体のバランスや骨盤の歪み、歩行、立ち方などと大きく影響し合います。症状に合わせて身体のバランスを整え、骨盤の矯正を行います。
また多くの股関節疾患で歩行時の痛みを伴うため、身体に合わせた歩行の改善や誘導を行います。不良姿勢や日常生活での負荷の積み重ねが、症状の根本的な原因である場合も多いです。
つまり今出ている痛みや症状を改善させても、根本的な原因を治療しないかぎり、症状は再発しやすいです。
その為にも、歪みや身体の使い方の改善、筋力強化、体重のコントロールなどの治療及び指導、アドバイスを行います。